学会設立の目的|JaPOS|日本生理学的矯正歯科学会webサイト


他業種にも求められる、科学的根拠にのっとった矯正歯科の確立を

「審美性や、職人技のように感覚的な技術の探求ばかりでなく、科学的根拠にもとづいた安全で合理的な矯正歯科治療を、歯科医師にプライドをもって行ってもらいたいのです。そのために歯科医師が集い、学び、研鑚を積む場所として、当学会を設立しました」

日本生理学的矯正歯科学会の平林大樹理事長は、こう熱く語る。 同学会は、矯正歯科治療における副作用(歯根吸収や顎関節症、咬合不全、疼痛、OSAS※等)の誘発を最小限に抑えた治療方法の確立を目的に設立された。そしてこの目的実現の手法としてさまざまなシステムを開発、数々の特許を取得している。

新しいセファロ撮影システムをベースにしたセミナーを展開

そうしたシステムの根幹をなすのが、特別に開発したスケールCephGaugeとF.H.P Gauge(補助装置)を用いた新しい撮影方法「顔面位指定角撮影法およびスケール法を用いたセファロ実寸大補償システム」だ。これはCephGaugeとF.H.P Gaugeを使い、頭部をいつも同じ角度に固定して撮影することで、正面・側方いずれのセファロ画像も、規格性の高い資料として診断に活用できるという画期的な方法である。しかもCephGaugeとF.H.P Gaugeを従来使用しているセファロ機器に取り付けるだけで、使用可能となるという簡便さである。

同学会では、このセファロ撮影システムと、このシステムをベースとする3つのテーマ「D.D.H.式セファロ新骨格診断システム」「3D-LST」「セファロメトリーを利用したOSASのスクリーン検査、診断、予防、治療」についてセミナーを行っている。そのうち「D.D.H.式セファロ新骨格診断システム」は、セファロ画像とiPadアプリケーション「Touch Ceph」を用いることで、矯正治療における骨格的なリスクを算出し、安全で効果的な治療計画立案へとつなげる骨格リスク判断システムである。また「3D-LST」は、特殊なワイヤーベンディングシステムと力学的により、副作用を誘発しにくく、チェアータイムや治療期間が短縮できるという、同学会独自の歯科矯正治療理論だ。

「当学会の根幹をなす新しいセファロ撮影法は、OSASの診断に応用できることから、医科の先生にも注目されています。歯科に留まらず、広く患者さんの健康に寄与できるのは至上の喜びです。このように、他業種も注目する学びが当学会にはあります。雄志ある若い歯科医師たちに集ってもらい、患者さんに負担の少ない矯正治療の方法をどんどん確立してもらいたいですね。」と平林理事長。今後の矯正歯科の礎にならんとする人こそ、同学会の門を叩いてみてはいかがだろうか。

※OSAS=閉寒型睡眠時無呼吸症候群

学会設立の目的

私どもの研究チームでは19年に渡り、歯の移動メカニクスを物理学、構造力学、金属組織、解剖学、組織学、発生学、生理学、遺伝学、人類学などのあらゆる方向から徹底的にそして臨床的に解明を行いました。特に力学的な問題と組織の変異、損傷、副作用について研究を重ねてまいりました。

その結果、日本生理学的矯正歯科学会では、包括矯正歯科治療時における副作用(歯根吸収、顎関節症、咬合崩壊、硝子様変性、機能障害、過度の痛み、無呼吸症候群の誘発など)の危険性を最大限に配慮した、新しいコンセプトによる、新しい歯科矯正治療を開発し臨床としてのテクニックとして確立いたしました。

今現在、世界各地で行われている包括矯正治療の基本スタイルは、今から80年から100年前に治療法として確立したものだと思われます。当時としては画期的なテクニックであり、歯を移動するメカニクスとしては十分なものでありました。

しかし患者さんのニーズが益々多様化そして高度化した現在では、包括矯正治療を担う臨床医にとっては、適正な顎位や咬合高径、均衡のとれた顎顔面形態、機能的咬合関係の回復、そして安全性を求める科学的な根拠が、基本的な考えとして必要不可欠なものになっているのです。 すなわち科学的に裏打ちされた、安全性と精度を高めることは時代の中で自然な流れだと私どもは理解すべきなのです。

私どもの研究会では、長年の研究により臨床の中で高い成功率を導き出す、3次元的歯体移動によって治療が行なわれる、新しいコンセプトの3次元的ライトフォーススライディングテクニック《3D-LST》を開発、確立いたしました。

本学会はそのテクニックの基となる理論と、多くの臨床(抜歯、非抜歯ともに)に対応できる信憑性を物理的にそして科学的に実証し、多くの先生方に新しい矯正治療のフィロソフィーとして伝えることを目的の一つとして設立いたしました。

学会を立ち上げるに際して理事長の地元、長野では若干不都合な点もありました。しかし竹山庶務理事のご好意により、この度、東京池袋に拠点をおくことができました。それに伴い定期的な講習会、勉強会などの充実と将来において矯正専門学校の設立を目指し、高度な包括矯正治療の発祥地として発展できればと考えております。

また本学会は、矯正歯科だけの範囲にとらわれず、他の臨床系や基礎系または異分野とのタイアップも重要なファクターとして考えております。歯科医師が歯科医師だけの知識に頼らず、大きな医療の中の1つと捉え、他の分野や基礎知識を充実させ、歯科医師が医師であることの原点に戻り、研究者、臨床家としての全体的なレベルを高めることのできる会にしていきたいとも考えております。

私どもは本物を求め、本質を追求することが私たちの使命だと考え、少しでも多くの人たちに正しい知識として、コンセンサスを得られるように頑張りたいと考えているのです。 多々難しい点もあると思われます、新しいことに対するアレルギー、批判等もあることでしょう。しかし私どもは、歯科医師としてのポテンシャルを上げ、スキルアップを目指し、歯科矯正治療に限らず、歯科治療に対する社会的評価の低さなどを自覚し、改善されるべき立ち上がる時代が来たのです。

そのためには精度の高い治療、フェイクでない治療、患者さんに利益のある治療、そしてドクターにとっても有意義な治療、透明感のある治療、科学的な治療、それらを目指していかなければならないのです。一般の多くの人達に理解を得られる環境作りが必要なのではないでしょうか。 その意味で私どもの学会が一つの起爆剤になれれば幸いと考えているのです。  

学会コンセプト

  1. 新セファロ撮影方法(特許応用、顔面位指定角撮影法およびスケール法を用いたセファロ実寸大補償システム
  2. D.D.H式骨格診断システム(特許取得された方程式から計算された指数〔①骨格指数②上顎成長指数③下顎成長指数④DH指数〕により歯科矯正治療骨格的リスクパーセンテージを算出し、臨床的に信憑性の高い治療方針を導き出す骨格リスク判断システム
  3. D.D.H式骨格診断システムをiPadアプリケーション「TouchCeph」 として開発
  4. 3次元的ライトフォーススライディングテクニック(3D-LST)

    副作用《歯根吸収、顎関節症、咬合崩壊、硝子様変性、機能障害、過度の痛み、無呼吸症候群の誘発等》を最大限に配慮した、新しい歯の移動(歯体移動)による歯科矯正治療理論およびテクニック

    • 3次元的歯体移動理論(ジグリング移動による傾斜移動はなく、一直線に歯根全体が移動する歯体移動理論)
    • カテゴリー3以上の重度の歯根吸収を殆ど生じない安全性の高い治療メカニズム(適正な矯正力、ローフリクション、歯体移動などのファクターによって実現)
    • 022×028インチスロットブラケットにメインアーチが016×022もしくは017×025を使用するライトワイヤーテクニックであり、また治療は常に定量的で適正矯正力の範囲で行われるため過剰な痛みを生じないノンペイン治療である。
    • 細いワイヤーでの3次元的歯の移動によりトルク、アンギュレーションをコントロールが可能(※トルクホールディングベンド《15度から20度》)
    • ※3次元的アンカレッジ理論(※可動的ティップバック理論※ティップバックハイベンド《15度から20度》)
    • 加強固定はマキシマムアンカレッジケース以外は必要としない
    • ※フリーモラーコンロール(定量的で安全な臼歯の近心移動とアンカレッジのコントロールの調和)
  5. ※新しいコンセプト、新しい治療であるため、新しい単語表現等があります

矯正学校の設立を目指す

矯正治療を本格的に勉強したい、将来矯正医専門医になりたいそんな、若いドクターたちに将来矯正専門学校を本部に設立したいと考案をしております。現在の状況では残念なことに歯科大学の矯正学教室に残ることは、狭き門と認識せざるを得ません。確かに矯正のスペシャリストになることは簡単ではないのかもしれません。けれど我々は臨床家です。確かな知識と技術を身につければ、時間はかかっても臨床的専門医にはなれるのです。形だけの名ばかりの専門医ではなく、クオリティーの高い本物の専門医になれるのです。そのための学校なのです。

日本生理学的矯正歯科学会では、各先生方が正しいコンセプトのもとに正しい伝道師となることを目指しております。準備には時間がかかると思われますが、準備が整い次第スタートしたいと考えております。

新しい時代を創るのは自分たちなのだと自負する先生方には新しい目標を持ってはいかがでしょうか。